【脳内シミュレーション】もし雨の日に傘をささずに歩いている女性がいたら
その日、台風の接近に伴い、外はけっこうな雨が降っていた。
いつものように会社へ向かう途中、最寄の駅を降りて歩いていると、傘も差さずに歩いている女性がいた。この雨の中差していないのは彼女だけだったので余計に眼についた。
傘、持ってないのかな。
カバンの中に折りたたみ傘を常備していた私は彼女に傘を渡し
私「これ、よかったら使ってください。」
驚く女子「えっ、でも・・・。」
私「安物なのでそのまま捨てちゃっていいですから。じゃ。」
さわやかな笑顔を残し颯爽とその場を去る私。
次の日、前日の雨が嘘のような青空の下、最寄りの駅を降り、会社に向かって歩いていると
「あっ、あの」
昨日の女性が傘を持って私のところへ駆け寄ってきた。
女性「これ、昨日はありがとうございました。」
そう言って私に傘をさしだす。
私「ああ、こんなボロ傘捨ててよかったのに」
女性「いえ、そういう訳には。昨日は本当に助かりました。それで、これよかったら。」
そう言って私に小さな手提げの紙袋を渡し
「じゃあ失礼します」
とそそくさと去って行ってしまった。
さっそく中を見ると小さな箱に入ったブランドもののチョコレートと小さな紙が入っていて、見ると彼女の連絡先とひと言メモが。
「良かったら連絡ください。昨日のお礼がしたいので。」
と書いてあった。
まるでドラマのようなシチュエーションではないか。
ドキドキしながら会社へ向かう足取りも軽やかになる。
軽やかすぎてこのまま空も飛べそうな気がする。
頭の中では小田和正の「ラブストーリーは突然に」が流れている。
~あの日あの時あの場所でキミに逢えなかったら僕等はいつまでも見知らぬ二人のまま~
そう、恋のはじまりはこんな季節の変り目にやってくるのだ。
もう一度言う。
恋のはじまりはこんな季節の変り目にやってくるのだ。
そんな脳内シュミレーションをぶちかましながらその女性を眺めつつ歩く。
だっておれ、妻子持ちだし。
だが私は現実に、
どうしよっかなー、傘貸してあげた方がいいかなー。でも周りに人いっぱいいるのに断られたらめちゃめちゃ恥ずかしいしなー。でもびしょ濡れで可哀想だしなーでもわざと傘差してないのかもしれないしなーそんなワケないかなー。
そんな事をぐるぐるぐるぐる考えてフッと先を歩く彼女を見ると
差しとる。
めっさ傘差しとる。
つーか持ってるならもっと早く差しとくれよ。
あやうくかっこつけて傘を貸そうと声をかけたものの断られて周りの人にクスクス笑われて顔真っ赤っかになるという大事故を起こすところだった。
声かけなくてよかったー。
◆最後に◆
断っておくが傘貸そうと思ったのはその女性が可愛かったからでは断じてない。
え?ブサイクだったら貸してたかって?
貸しませんよそんなもん。
この話はこれで終わりだバカヤロー。