コペルニクス的転回
疎外感を感じていました。
物心ついてからというもの、人と会話している時に言葉が聞き取りづらいと感じる事が多くありました。
かと言って人が言った事に対して何度も
「え?」「もう一回言って」「なんて言ったの?」
などと聞き返すのは相手に対して悪い気がして避けてきました。
なので何を言っているのかわからない場合も聞こえたふりをして、言われた事と違う行動をして後で指摘される事もありました。
大勢で会話をしている際、誰かが言った一言で場が盛り上がった時、それが聞き取れなかったにも関わらず皆がしらけるのを避ける為に、あえて聞こえたふりをして一緒に笑っていたりする事が実はたくさんありました。
でも実際は何を言っていたのかわからないので、置いてきぼりをくったような、疎外感のようなものを感じながら今まで生きてきました。
これまで受けた健康診断の聴力検査で異常が見つかった事は無かったし、生活に支障をきたす事も無かったので病院に行く程ではないだろう、とこの歳になるまでほったらかしにしてきました。
ところが先日、娘を耳鼻科に連れて行く機会があったので、私も思い切って耳の検査をしてもらう事にしました。
精密検査の結果、医師が発した言葉は意外なものでした。
「あんた、30代の平均値よりはるかに聴こえは良いはずだよ」
は?
混乱しました。
それじゃあこの聴こえの悪さは一体何なんだ、説明がつかない。
私が今まで感じていた疎外感は?
納得が行かない気持ちで医師に詰め寄ると
「ん~、それはたぶん人の話を集中して聴いてないからじゃない?」
あ
そっち?
衝撃である。
聞こえなかったのではない。
聞こうとしていなかったのだ。
なんというコペルニクス的転回。
「あなたは人の話を全然聞いていない。」
確かにそれはこれまで色んな人たちに指摘されてきた事だし、自覚もしていたのだが、現代医学によってそれがはっきりと証明されてしまったのです。
耳のせいだとばかり思っていたけど、問題はそこではなかったというまさかの展開に自分自身、驚きと共に恥じらいを感じております。
反省。
これからは人の話をちゃんと興味を持って聞きたいと思います。